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カテゴリ:本( 129 )

マーク・トウェイン『人間とは何か』

 マーク・トウェインの『人間とは何か』(岩波文庫)を読んでいる。
 
 青年と老人の対話という形式で、「老人」を通して
語られるトウェインの人間観に共感する。

 「老人」が何度もくりかえす、人間の行動原理は、
 次のようなものだ。

 人間って奴の行動ってのは、終始一貫、絶対にこの唯一最大の
動機―すなわち、まず自分自身の安心感、心の慰めを求めるという
以外には、絶対にありえんのだな(31頁)。

 そのとおり!

 私が排外主義にNO!を唱えるのは、
 朝鮮学校の「無償化」からの排除にNO!を唱えるのは、
正義のためでも、朝鮮学校の生徒のためでも、決してない。

 排外主義などという許しがたいことに異を唱えない「自分」。
 朝鮮学校の排除などという暴挙を黙認する「自分」。
 そんな「自分」にはなりたくない、そんな「自分」では納得できない、
という、至極簡単な「自分」のためという理由にもとづいて、
私は行動している。

 これからも私は、「自分」のために行動し続けるだろう。
  
 すべては自分のため。
by kase551 | 2011-02-11 23:53 | | Trackback | Comments(0)

「十二月八日」

 今日は12月8日。

 太宰治の「十二月八日」を再読。

 この作品を「戦争協力作品」などと解釈する人もいるが、
わたしはこの作品に漂う、無謀な戦争に向かう日本を
皮肉に見る視点に感嘆する。

 この作品に登場する「主人」は、「西太平洋って、どの辺だね? サンフランシスコかね?」 
などと、頓珍漢なことを言いながら、妻の「日本は、本当に大丈夫でしょうか」という問いに、
「大丈夫だから、やったんじゃないか。かならず勝ちます」と、答えている。

 その「かならず勝ちます」ということばは、
「よそゆきの言葉」と表現されている。
 米国の地理も知らず、「かならず勝ちます」と断言する「よそゆきの言葉」。

 そして、その「主人」のことばを聞いた妻は、
「主人の言う事は、いつも嘘ばかりで、ちっともあてにならないけれど、
でも此のあらたまった言葉一つは、固く信じようと思った」と考える。

 「かならず勝ちます」という「よそゆきの言葉」、
「主人の言う事は、いつも嘘ばかりで、ちっともあてにならないけれど」に、
私は太宰治の皮肉な視線を感じる。

 そして、買い物に行った妻が、
「こんなものにも、今月からは三円以上二割の税が附くという事、ちっとも知らなかった」と思う箇所や、
卒業と同時に入営する大学生たちに対する、
「まあほんとに学生のお方も大変なのだ」などの感慨からも、
私はこの作品を、単なる「戦争協力作品」としては、読めない。

 また、新聞のページ数(「珍しく四ページだった」)や、
酒の配給(「隣組九軒で一升券六枚しか無い」)など、
物資窮乏の様子も、太宰は活写している。

 小説の終盤、「銭湯へ行く時には、道も明るかったのに、
帰る時には、もう真っ暗だった。燈火管制なのだ。もうこれは、演習でないのだ。
心の異様に引きしまるのを覚える。でも、これは少し暗すぎるのではあるまいか。
こんな暗い道、今まで歩いた事がない」における、
「行きは明るく、帰りは真っ暗」という設定や、
「少し暗すぎるのではあるまいか。こんな暗い道、今まで歩いた事がない」
という妻の思いは、戦争の先行きを暗示しているのではないだろうか。

  そして、その不安な気持ちを抱いている妻に
「主人」は、「お前たちには、信仰が無いから、こんな夜道にも難儀するのだ。
僕には、信仰があるから、夜道もなお白昼の如しだね。ついて来い」と、
「どんどん先に立って」歩いていく。
 
このような「主人」の態度に、妻が「どこまで正気なのか」と
 呆れるところで小説は終わる。
妻は、 「この人はおかしいのではないか?」と、あきれているのだ。


  どんどん先に立って歩いた結果、日本はアジア諸国に多大な被害を与え、
 自らも、甚大な被害を負った。

  夏目漱石の「三四郎」における台詞を思い出した。

 「滅びるね」



  「中国になめられるな」「ロシアになめられるな」などと
 声高に叫ぶ人たちは、この作品をじっくり読んでみるべきだろう。
  
  でも、「そうだ。この『主人』のように、どんどん行くべきだ!」
 と、誤読するかもわからんね・・・・

  
by kase551 | 2010-12-08 21:57 | | Trackback | Comments(2)

雲遊天下

 ビレッジプレス(http://www.village-press.net)
という出版社が出している『雲遊天下』という季刊誌を
購読している。

 今はなき、「プレイガイドジャーナル」を思い出させる、
手づくり感あふれる味わいが、なんとも良い。

 豊田勇造、大塚まさじ、友部正人というベテラン歌手たちの
連載エッセイも読み応えがある。

 この雑誌の表紙イラストも、また味わい深い。
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 山川直人さんの絵は、この雑誌にぴったり。
by kase551 | 2010-11-01 22:24 | | Trackback | Comments(0)

三井環『「権力」に操られる検察』

 鈴木宗男氏が、政治的に葬られ、
 小沢一郎氏が、ネガティブキャンペーンの餌食になり、
 村木厚子氏に浴びせられた冤罪が、ようやく晴らされた今、

 三井環著『「権力」に操られる検察』(双葉新書)
は、できるだけ多くの人に読んでいただきたい好著だ。

 三井氏は、大阪高等検察庁公安部長だったときに、
税金である「調査活動費」が私的に流用されていることを
内部告発したために、報復されて逮捕・有罪確定・服役という
理不尽な仕打ちにあっている。

 「裏も表も知り尽くした」三井氏の記述は実に説得力がある。

 「朝鮮総連ビル詐欺事件」における安倍晋三の姿には、
 あらためて虫唾が走る。

  巻末の、鈴木宗男・堀江貴文・三井環3氏による鼎談も、
 特に鈴木氏と三井氏のやりとりに引き込まれる。
  
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 取り調べ全面可視化をうったえていた鈴木氏の「有罪確定・収監」が、実に無念だ。
by kase551 | 2010-09-22 22:24 | | Trackback | Comments(0)

韓東賢『チマ・チョゴリ制服の民族誌』

  韓東賢(ハン トンヒョン)著『チマ・チョゴリ制服の民族誌』(双風社)を読む。

  数ヶ月前に買っていたが、「ちょっと硬そう」という先入観ゆえ、
 なかなか読む気になれなかった。

  今日、twitter(ツイッター)http://twitter.com/KASE551で、
「ボーダー&レス」(藤代泉作) http://kaseyan.exblog.jp/12870466
 に関して、韓さんとやりとりをする機会に恵まれ、「よし、読もう」と
 手に取った。

  いやぁ~、労作であり、傑作です。
  
  どのような背景によって、朝鮮学校の女子生徒の制服として、
 チマチョゴリが選択され、着られてきたのか? 当事者の生徒たちは、
 どのような思いで、制服としてのチマチョゴリを身につけていたのか?
  そして、アイデンティティとは何か?

  これらについて著者は、精力的なインタビューと、的確な理論適用により、
 「あぁ、そうか!」と読み手にひざを打たせる、説得力ある分析・解釈を行なっている。
 
  インタビューにおいては、「やっぱりそうですよね。私はそれをいいことだとは思わないんですよ。同じことを求めなくてはならないでしょう」(143頁)
  「Nさんにとってチマ・チョゴリ制服とは、ひとことでいうと何でしょうか」(145頁)など、
  それはあかんやろ?(インタビュアの意見開示、「ひとことでいうと」というサボリ質問)
 と感じる点はあったが、熱意と誠実さを、強く感じた。

  
  私が何度もうなずき、赤い付箋を貼ったのは、次の部分だ。

 「語りもひとつの表現であり、パフォーマンスである。アイデンティティとその表現の
 パフォーマンス性ゆえに、インタビューにもとづく類型化は『語り』の類型化、、
 またアイデンティティ『表現』の類型化にはなりえても、アイデンティティそのものの
 類型化にはなりえないのではないだろうか」(194-195頁) 
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  私も「聞き取り調査」を何回も経験しているので、「あ~、ほんまそのとおり!」
 とうなずきながら、付箋を貼った。

  しかし、韓さんは文章も上手いし、視点もシャープやねぇ。
大いに勉強になりました。

  私は2002年に、在韓華僑を対象にしたアンケート調査を実施した。
  その資料と、以前に行なったインタビュー調査から得た資料をまとめて、
 一冊の形にしようと思いながら、滞っている。
  
  韓さんのおかげで、強く刺激を受けた。
  おおきに。 
by kase551 | 2010-09-18 22:58 | | Trackback | Comments(0)

『アジェンダ』購読開始

 某メーリングリストで、『アジェンダ』(http://www3.to/agenda)
という雑誌名を目にして、「あぁ、康玲子さん
から、前にいただいた雑誌やなぁ」と思い出す。

 康さんとは、3年前に京都で出会い、拙著『コリアン三国誌』(新幹社)
を勝手に送りつけたことから^^;、ご縁ができた。 
 

 『アジェンダ』に連載している康さんの文章を読み直し、
「なんで今まで定期購読せぇへんかったんかなぁ? アホやな、俺は」と改めて思う。

 「いろいろバタバタしていたから・・・」は、言い訳やね。
 やはりどこか、気が抜けて、浮ついていたんよね。

 でも今年、「排外主義にNO! 福岡」を立ち上げてから、
だいぶ気合は入ってきたと思う。

 『アジェンダ』第17号(2007年夏号)に掲載された、
康玲子さんの文章を引用する。


   しかし、人間の可能性がもし無限大だというなら!
   私の人生に何か「欠け」があったとして、
  残る人生だけでも、それもまた無限大だと言うことが
  できるはずではないか。
  ―数学にあたたかさを感じた経験である。(82頁)


 この号をいただいたとき(2007年)には、
この部分の「すごさ」を、俺は「理屈」でしか
分かってなかったと思う。


 今、深い感動をいだきながら、読み返している。   

 『アジェンダ』の定期購読を申し込んだ。
by kase551 | 2010-06-19 23:33 | | Trackback | Comments(0)

『イノチのせんたく』

 ずっと前から欲しいと思っていた
高瀬泰司『イノチのせんたく』(話の特集)を入手。

 高瀬氏は、元京都府学生自治会連合委員長で、
豊田勇造さんが歌う「泰ちゃん」の主人公。
 

 ♪壁は厚く 時は早く 輪は切れやすく
 それは前に 一度あなたにも あったこと♪

 ♪あらゆるものがこじんまりと まとまろうとする今こそ
 泰ちゃん あなたのような人に 生きていてほしかった♪


 じっくりと読ませてもらおう。
by kase551 | 2010-04-21 23:59 | | Trackback | Comments(0)

わたしにとっての「ハルキ」

 わたしにとっての「ハルキ」は、
今はなき(雑誌がなくなったという意味の「今はなき」です)『プレイガイドジャーナル』の人気編集者・森晴樹氏だ。

 軽妙でイヤミのない下ネタが好きだった。

 こっちのハルキとは異なり、あっちのハルキは「壁と卵」などと
レトリックを弄するから、嫌なんよなぁ・・・・

 
 
by kase551 | 2010-04-18 23:04 | | Trackback | Comments(0)

井上ひさし死去

  井上ひさしの小説を初めて読んだのは、
『朝日新聞』に連載していた『偽原始人』だった。

  受験競争社会に正面から異を唱えたこの作品は、
 中心人物である小学生トリオと、「敵役」である
 家庭教師の人物描写が秀逸で、山下勇三氏のイラストも
すばらしく、毎回切り抜いていた



  高校時代に読んで印象に残っているのが、
 『青葉繁れる』と『表裏源内蛙合戦』。

  若者の心情を活写したという点において、
 この『青葉繁れる』は、「青春文学」の
 スタンダードだと思う。


  今日、戯曲『表裏源内蛙合戦』を再読した。

  ことば遊びの面白さ、「表の源内」「裏の源内」
 という設定によって、人間としての源内を描き出す手法に、
 あらためて感嘆する。

  この作品や、『12人の手紙』など、井上氏の作品には、
 「祈り」が込められたものが少なくない。

  これは彼がカトリック系の養護施設で育ったことと
 無縁でないと、私は考えている。  

  
  『吉里吉里人』は、一気に読んだ。


星新一の傑作ショートショート「マイ国家」を読んでから、「国家とはなんやろ?」という疑問を
 抱くようになった私は、『吉里吉里人』を読んで、
 その疑問を一層深くした。

 『吉里吉里人』も、再読せなあかんなぁ・・・・
 これは大作やから、まとまった休みがとれるときに・・・  

  
  それにしても、井上氏が米原万里さんの妹と再婚したときには、ちょっと驚いた。 
by kase551 | 2010-04-12 22:08 | | Trackback | Comments(0)

慧眼

 かんべむさし『黙せし君よ』(双葉文庫)を再読し、
著者の慧眼に感嘆する。

 この作品の単行本が発表されたのが、1990年。
 
 かんべむさしは、主人公の口を借りて、コンピュータ社会について、
次のように予言している。


 「操作法はどんどん簡単になっていくに違いないし、慣れて使いこなせば、
 便利なシステムであることに間違いはないんですから。それにパソコン・ネット
 が広がり、コピー・マシンやファックスが個人の家庭に普及すれば、国家による
 情報統制がどんどんやりにくくなるでしょう(後略)」

 「勿論、コンピューター社会が高度管理社会になる危険性も同時にあるわけですけど、
 その機器を自由に使える人間が多くなるほど、それを裏から崩しやすくもなっていく。
 ここまできたら、情報ゲリラを増やして社会に活力を保つためにも、もっともっと普及
 させた方がいいだろうと思いますよ」
by kase551 | 2010-03-23 22:08 | | Trackback | Comments(0)