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想い出の赤塚作品(2)

『おそ松くん』に続いて、『少年サンデー』に
赤塚不二夫が連載した『もーれつア太郎』は、
下町で八百屋を営む少年・ア太郎を主人公とする
「人情噺」だ。

 しかし、多くの人がこの作品において記憶している
キャラクターは、このネコだろう。
                              ↓
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                         (かせたに稚拙模写)

     「オレとケッコンするニャロメ!」などと叫んでは、
    いつも痛い目にあう「ニャロメ」が、当時の大学生たちから
   「抵抗のシンボル」として、もてはやされていたことを、
    私は成人してから知った。

  まあ人の勝手やけど、俺はそういう「ニャロメ崇拝」は、好かんなぁ・・・
 
  白土三平の『カムイ伝』を階級闘争のテキストとして解釈しようとしたり、
 よど号ハイジャック犯たちが、「われわれは、『あしたのジョー』だ」などと、 
 はた迷惑な感情移入をしたり・・・

  ちなみに白土さんは、当初『カムイ伝』を、アイヌ民族の抵抗戦争である
 「シャクシャインの乱」に絡めていくつもりだったのに、読者の反応と編集部の
  意向に合わせて、それを変えたらしいですね。


  それはともかく。

  怪猫「ニャロメ」と、彼の盟友「ケムンパス」と「べし」は、絶妙のトリオでした。

  パチンコに夢中になった親からはぐれた赤ちゃんを、このトリオが育てようとする
 話は、今でも忘れられない。

  赤ちゃんのための物資を調達するため、ア太郎たちをだまそうとする「ニャロメ」の
 姿は、なんともいじらしい。
  そして、赤ちゃんが親に引き取られた後、「赤ちゃんほしいべし」とつぶやく
「べし」が、実にカワイイ!!
   
   しかし俺も、よぅおぼえとるなぁ、細部に至るまで。^^;

   これはひとえに、赤塚作品の力ゆえ。


   長谷邦夫さんの労作『漫画に愛を叫んだ男たち』(清流出版)によると、
  赤塚マンガの創作過程において、長谷氏や古谷三敏氏という才人たちが、
  赤塚氏と常にアイデア会議を行っていたとのこと。
  
想い出の赤塚作品(2) _c0040369_0131796.jpg

   このような綿密な構成に加えて、当時の赤塚氏は、次のような指示を、
  スタッフに説いていたという。

   「いいか、ギャグ漫画のキャラクターはシンプルだろう。でも一コマひと場面、
   人物の手の指の変化が、感情に合わせて描けていないとダメなんだよ」
   (『漫画に愛を叫んだ男たち』299頁) 
     
     
   このような過程を経て生み出されたマンガを、少年時代に読み続けられたことは、
  実に幸運だった。
   赤塚氏をはじめとする、フジオプロ(当時)の方々に感謝する。

   
    
  『もーれつア太郎』の登場人物では、「デコッ八」「ブタ松」「ココロのボス」の存在も大きい。
  
  ア太郎を「親分」と慕う「デコッ八」。
  その「デコッ八」を「親分」と尊敬する「ブタ松」。
  そして、「ハァ、ポックンポックン」「クーダラナイ クーダラナイ」などと、
 絶妙のセリフを吐きながら、時には純情な一面を見せる「ココロのボス」。
 

   今思い出した作品も、実に面白かった。

   里帰りをする「デコッ八」の代わりに、「ココロのボス」がアルバイト店員になる。
   軽妙な「ボス」のトークに魅了された顧客は、次々に買い込む。

   店に戻った「デコッ八」は、「親分、おれがいない間、売り上げ大丈夫でしたか?」と
  気遣って、帳簿を見て愕然とする。

   「おれがいないほうがいいんだ」と思った「デコッ八」は、店を出て、「ブタ松」と共に
  八百屋を始める。

   上機嫌で出勤する「ココロのボス」は、「デコッ八」の姿を見かけ、仮病を使い、
  ア太郎に欠勤・退職を告げる。

   困ったア太郎は、「デコッ八」と「ブタ松」が営む八百屋に行き、
  「デコッ八」を指差して言う。「そのジャガイモをくれよ」

   「高いですよ」と応える「ブタ松」。
   「いくらだい?」とたずねるア太郎に「ブタ松」は一言。
   「ゲンコツひとつ!」
   「よし、買った!」

    泣きながらア太郎を殴る「ブタ松」。
    

   『もーれつア太郎』は、さまざまなキャラの魅力と、
  人情噺の面白さを、今でも私に実感させてくれる。      
  
  
by kase551 | 2008-08-05 23:56 | マンガ | Trackback | Comments(4)
Commented by ゆら at 2008-08-06 20:18 x
あたし、ア太郎で印象深いのはココロのボスのココロよ。
顔が犬だココロよ。
それとー、歌も好き! オープニングもエンディングもCD持ってるよ(・∀・)

かせたにさんが覚えてるその2話、いいねー。読んでるだけで感動しちゃう。ワシ、ちゃんと覚えられる程大きくなかったし(テレビ)、マンガほとんど読まないからなー(・_・)
こんどマンガ喫茶でも行ってみようかなぁ・・・・
Commented by kase551 at 2008-08-09 11:10
ふふっ、「ココロのボス」の顔はブルドッグみたいですが、
犬ではなくタヌキですよ。^^

 「ボス」のチャームポイントのひとつは、小さな帽子です。^^
Commented by 長谷邦夫 at 2008-08-10 08:58 x
赤塚氏(そして小生)についてのご紹介、有難う御座います。
こうした、熱烈なテキストが、また、日本に素晴らしい
マンガを生んでいくのだと、ぼくは信じております。
有難う御座いました。
Commented by kase551 at 2008-08-10 23:08
 御著は、マンガに関心を持つ人すべてに読んでもらいたいですね。
 
 「あんたには漫画に対する愛がないんだ!」(226頁)を
読み返すたびに、「そうや!」と、拳を握りしめております。^^;


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