『おそ松くん』に続いて、『少年サンデー』に
赤塚不二夫が連載した『もーれつア太郎』は、 下町で八百屋を営む少年・ア太郎を主人公とする 「人情噺」だ。 しかし、多くの人がこの作品において記憶している キャラクターは、このネコだろう。 ↓ 「オレとケッコンするニャロメ!」などと叫んでは、 いつも痛い目にあう「ニャロメ」が、当時の大学生たちから 「抵抗のシンボル」として、もてはやされていたことを、 私は成人してから知った。 まあ人の勝手やけど、俺はそういう「ニャロメ崇拝」は、好かんなぁ・・・ 白土三平の『カムイ伝』を階級闘争のテキストとして解釈しようとしたり、 よど号ハイジャック犯たちが、「われわれは、『あしたのジョー』だ」などと、 はた迷惑な感情移入をしたり・・・ ちなみに白土さんは、当初『カムイ伝』を、アイヌ民族の抵抗戦争である 「シャクシャインの乱」に絡めていくつもりだったのに、読者の反応と編集部の 意向に合わせて、それを変えたらしいですね。 それはともかく。 怪猫「ニャロメ」と、彼の盟友「ケムンパス」と「べし」は、絶妙のトリオでした。 パチンコに夢中になった親からはぐれた赤ちゃんを、このトリオが育てようとする 話は、今でも忘れられない。 赤ちゃんのための物資を調達するため、ア太郎たちをだまそうとする「ニャロメ」の 姿は、なんともいじらしい。 そして、赤ちゃんが親に引き取られた後、「赤ちゃんほしいべし」とつぶやく 「べし」が、実にカワイイ!! しかし俺も、よぅおぼえとるなぁ、細部に至るまで。^^; これはひとえに、赤塚作品の力ゆえ。 長谷邦夫さんの労作『漫画に愛を叫んだ男たち』(清流出版)によると、 赤塚マンガの創作過程において、長谷氏や古谷三敏氏という才人たちが、 赤塚氏と常にアイデア会議を行っていたとのこと。 このような綿密な構成に加えて、当時の赤塚氏は、次のような指示を、 スタッフに説いていたという。 「いいか、ギャグ漫画のキャラクターはシンプルだろう。でも一コマひと場面、 人物の手の指の変化が、感情に合わせて描けていないとダメなんだよ」 (『漫画に愛を叫んだ男たち』299頁) このような過程を経て生み出されたマンガを、少年時代に読み続けられたことは、 実に幸運だった。 赤塚氏をはじめとする、フジオプロ(当時)の方々に感謝する。 『もーれつア太郎』の登場人物では、「デコッ八」「ブタ松」「ココロのボス」の存在も大きい。 ア太郎を「親分」と慕う「デコッ八」。 その「デコッ八」を「親分」と尊敬する「ブタ松」。 そして、「ハァ、ポックンポックン」「クーダラナイ クーダラナイ」などと、 絶妙のセリフを吐きながら、時には純情な一面を見せる「ココロのボス」。 今思い出した作品も、実に面白かった。 里帰りをする「デコッ八」の代わりに、「ココロのボス」がアルバイト店員になる。 軽妙な「ボス」のトークに魅了された顧客は、次々に買い込む。 店に戻った「デコッ八」は、「親分、おれがいない間、売り上げ大丈夫でしたか?」と 気遣って、帳簿を見て愕然とする。 「おれがいないほうがいいんだ」と思った「デコッ八」は、店を出て、「ブタ松」と共に 八百屋を始める。 上機嫌で出勤する「ココロのボス」は、「デコッ八」の姿を見かけ、仮病を使い、 ア太郎に欠勤・退職を告げる。 困ったア太郎は、「デコッ八」と「ブタ松」が営む八百屋に行き、 「デコッ八」を指差して言う。「そのジャガイモをくれよ」 「高いですよ」と応える「ブタ松」。 「いくらだい?」とたずねるア太郎に「ブタ松」は一言。 「ゲンコツひとつ!」 「よし、買った!」 泣きながらア太郎を殴る「ブタ松」。 『もーれつア太郎』は、さまざまなキャラの魅力と、 人情噺の面白さを、今でも私に実感させてくれる。
by kase551
| 2008-08-05 23:56
| マンガ
|
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Comments(4)
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ゆら
at 2008-08-06 20:18
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あたし、ア太郎で印象深いのはココロのボスのココロよ。
顔が犬だココロよ。 それとー、歌も好き! オープニングもエンディングもCD持ってるよ(・∀・) かせたにさんが覚えてるその2話、いいねー。読んでるだけで感動しちゃう。ワシ、ちゃんと覚えられる程大きくなかったし(テレビ)、マンガほとんど読まないからなー(・_・) こんどマンガ喫茶でも行ってみようかなぁ・・・・
0
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kase551 at 2008-08-09 11:10
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kase551 at 2008-08-10 23:08
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