赤塚不二夫の代表作「おそ松くん」で特に印象に残っている
作品は、「イヤミはひとり風の中」と「チビ太の金庫破り」だ。
「イヤミはひとり風の中」は、盲目の少女のために、貧乏浪人イヤミが
奮闘する時代劇で、敵役(わがままな若殿)で登場するチビ太も、
実に良い味を出している。
小学生のころ、これを読んだ私は泣いた。
そして中学生になり、チャップリンの『街の灯』を見た私は、
「そうか、これやったんか!」と、感嘆した。
「チビ太の金庫破り」では、金庫破りから足を洗ったチビ太を、
刑事イヤミがつけねらう。
「絶対にあいつのシッポをつかんでやるざんす」(セリフは正確ではありません^^;)
というイヤミの思いに反して、チビ太は勤勉に働き、銀行家の娘と婚約する。
ある日、銀行家が、最新型の大型金庫を披露していたとき、彼の息子が
金庫に閉じ込められてしまう。
カギも一緒に閉じ込められたためか、 ダイヤル設定が複雑すぎるためか、
そのあたりはよく憶えていないが、 とにかく金庫は空けられない状態になる。
「チビ太さん、助けてあげて!」と、叫ぶ婚約者。
チビ太は、かつての「商売道具」を取り出そうとするが、
窓の外ではイヤミが目を光らせている・・・・・・
これもはじめて読んだ時、目が潤んだ。
短編では「悪役」が多いイヤミが、長編では主役・準主役を張るという
配役の妙は、『ドラえもん』のジャイアンが、劇場アニメでは「いい役」
を演じるとおもしろさと、通じる点がある。
(赤塚氏と藤子氏は、トキワ荘の「同志」でもあるし)
中学生か高校生のころ、O・ヘンリの「よみがえった改心」を読んだ
私は、またうなった。
「そうか、これやったんか!!」
私にとって「おそ松くん」は、「感動の作品」である。