田中伸尚氏の『憲法を奪回する人びと』(岩波書店)
を再読する。
私の友人である鄭琪満(チョンギマン)さんに
関する記述に、改めて胸を打たれる。
昨夜、東京出張中の彼に電話をしたばかりだったので、
感銘もひとしおだ。
毎年私は、若い人たちに、「在日コリアンの形成過程」
について話をする。
「すべての在日コリアンは、強制連行の被害者である」というような、
事実に反することは、絶対に話さない。
しかし、在日コリアンの形成過程が、日本による朝鮮の植民地支配
政策(「土地調査事業」など)と切り離せないことや、強制連行が間違いなく
存在したことは、必ず伝えている。
強制連行について説明するとき、鄭さんの父親の事例を、次のように
紹介すると、若い人たちの顔が、明らかに変わる。
「『強制連行がなかった』とかゆう、デタラメを信じたらあきまへんで。
証人がおるからね。
私の友達のお父さんはなぁ、連行しようとするヤツに片腕を引っ張られ、
片腕はお姉さんに引っ張られたけど、結局は連行されて九州の炭鉱に
送られて、強制労働させられたんよ・・・」
『憲法を奪回する人びと』の138頁に、アレックス・ヘイリー原作の
米テレビドラマ『ルーツ』において、黒人たちがアフリカから強制連行され、
船底に詰め込まれるシーンを見ていた鄭さんの父親が、ボロボロと泣いたという
実話が紹介されている。
「なんして泣きよると?」という鄭さんの問いかけに、
父親は次のように答えたという。
「オレはこげんして連れてこられた」