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「ある夜の物語」と「読者罵倒」

 傑作評伝『星新一』(最相葉月著 新潮社)に刺激されて、
かつて単行本で読んだ星新一・筒井康隆両巨頭の作品を
文庫で買って再読しました。

 小学生のころ、兄から借りて読んだ星さんの
『未来いそっぷ』(新潮社)と、サラリーマンになって
2~3年目に買った筒井さんの『原始人』(文藝春秋社)です。

 前者は約35年ぶり、後者は約20年ぶりの再読です。
『未来いそっぷ』は兄の蔵書で、『原始人』は知人に
貸したまま返ってこなかったので、どちらも再読することもなく、
今まで来た次第です。 


 今読み直すと、当時はあまり「ピン」とこなかった作品や
表現が、「あぁ~!」と頭に染み込んできます。

 『未来いそっぷ』収録の「いい上役」は、組織論・集団論の
本質を描いており、「余暇の芸術」は、ネット「SNS」のわずらわしさ
を予言したような作品です。

 そして、「ある夜の物語」・・・・
 これは、ディケンズの「クリスマスキャロル」、
O・ヘンリの「賢者の贈り物」と並ぶ、
「クリスマスハートウォーミングノベル」の傑作ですね。
 恋人や肉親が難病で死ぬという小説には、「あっ、そう」
という、昭和天皇の口ぐせのような感想しか抱けませんが、
「ある夜の物語」は、私にとって「泣ける小説」です。
 
 また、「企業内の聖人」は、『星新一』を読んだあとだけに、
一層味わい深い・・・・


  一方『原始人』では、「読者罵倒」の面白さと問題意識に
圧倒されました。
 演劇に造詣の深い筒井さんは、かつてエッセイで
「観客罵倒」を紹介されていましたが、「読者罵倒」を
初めて目にしたとき(1987年ごろ)、私は、そのリズム感のみを
楽しんでいたように思えます。

 今日再読して、ほんまに笑い転げながら、語彙力の豊富さに
感嘆しました。
 ジャズ通の筒井さんは、クラリネットが好きで、サックスはあまり
好きではないようですが、「読者罵倒」のリズムは、「自分の歌」を
吹きまくる、ソニー・ロリンズのソロ演奏に通じるのではないかと、
感じました。

 そして、この小説は、読者への「ラブコール」なんですよねぇ・・・

 「もっと想像力を広げて小説を読んでください!
  自分の価値観や判断力を超える小説と出会ったら、
 それはあなたの世界観を広げるチャンスかも?
  それは、あなたを解き放ち、自由な思考に導くのでは?」
 という、「ラブコール」です。

 それにしても、下に少し引用しますが、この強烈な筒井節! 
 ほんま、星新一・筒井康隆両巨頭の作品を読める幸せを実感します。

 (引用はじめ)
  来るやら来ぬやら二十一世紀、だが確実に出現せぬは二十一世紀の小説。
  二十一世紀の小説21世紀の小説とさんざ宣伝され尽くされいやはや作家にとって
  二十一世紀はすでに過去のものなるぞ。すでに読者たるおのれらは死んでいる。  
  大脳左半球の欠けた汝らは虚構内での生存さえ許されぬ存在だ。それを嘆くことさえ
  知らぬ幽霊。汝らは破壊された、記憶のない、言葉のない生存を望み、その中で
  充たされ満足する哀れな生きもの。 (引用終り)
by kase551 | 2007-04-14 23:54 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by oryza at 2007-04-15 17:40 x
かせたにさん こんにちは。
SF少年ではなかったですが、小学校・中学校の頃は、クラスに必ずといっていいほど、星新一や山田風太郎ファンがいて、本が回ってきたものです。高校になると、残念ながらツツイストは周りに見当たらず、一人ツツイストしてました。
ところで、今SBというblog使っていますが、カテゴリー分類では不十分なので、「タグ」の設定ができる「tagclick」を導入し始めています。
他のblogから知ったのですが、exciteblogでは記事にtag設定が可能ですね。訪問した人が記事検索する時も便利ですが、自分で過去の記事探す時に便利だと思います。
Commented by kase551 at 2007-04-15 23:33
 こんばんは。
 関西には、「隠れツツイスト」が案外多いかもしれませんね。
 「おもろい!」と感じながらも、筒井氏の「育ちの良さ」や
「文学青年」の部分に、「なんかしてけつかんねん!」と
反発してみせているのかも知れません。
 もっとも40代後半以下の人たちには、筒井さんの作品自体を
知らない人も多いようですね。 MOTTAINAI!

 「タグ」の情報、ありがとうございます。
Commented by oryza at 2007-04-16 10:21 x
かせたにさん こんにちは。稲田です。
NHK-BSで毎日曜に放送している週刊「ブックレビュー」で、次回4/22のゲストは最相葉月さんです。
Commented by kase551 at 2007-04-16 21:25
稲田さん、情報ありがとうございます。
ぜひ見ようと思います。


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