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星新一

 10年前に亡くなったショートショートの
第一人者・星新一の評伝が出たというので、
「おぉっ!」と勇んで買い込みました。

 最相葉月『星新一』(新潮社)
 
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 大労作です。
 星新一という作家に関心のある人には、
ぜひ読んでいただきたい本です。


 私が星さんの作品を初めて読んだのは、
小学校5,6年のときだったと思います。

 当時、次兄が星ワールドにのめりこみ、
『未来いそっぷ』『ボッコちゃん』『かぼちゃの馬車』
『ようこそ地球さん』などの作品集を愛読していたので、
借りて読んでみると・・・・

 めちゃくちゃ面白いんですね。
 「こんな発想をする人がおるんや!」と感動しました。

 その後(星さんのことばづかいならば、「そのご」)、
自分でも文庫本を買って読み始め、
『おもろ放談・SFバカばなし』(角川文庫)で、
「バカボンのパパに会いたい」という「夢」を
仲間内で語る感覚などに、「すごいなぁ」と感嘆しました。

 特に印象深い星作品は、次の通りです。
 (  )内は、私の勝手な一口コメントです。

 「セキストラ」(人間の本能と、征服・被征服の歴史)
 「午後の恐竜」(ジュラシックパークなんかよりも、これを映画化してほしい)
 「マイ国家」(「国家」を知るための参考書として、長編では井上ひさし『吉里吉里人』、短編はこれです)
 「おーい でてこーい」(究極のホラーですね)
 「とんでもないやつ」(経済学部の学生さんは必読!貨幣の歴史)
 「プレゼント」(藤子・F・不二雄さんと共通する、抜群の発想力。「大小」・「カワイイ」は相対的)
 「冬きたりなば」(発想もすばらしいのですが、詩情にも富んでいます)
 「ゆきとどいた生活」(これも極上のホラーですね。藤圭子の娘ではありませんが、オートマティック!!)
 『人民は弱し 官吏は強し』(記録文学者としての星新一)

 今私が、思いつくまま挙げてもこれだけの
傑作が挙がる作家について、「文壇」における
評価は、不当に低いんですね。


 最相さんの評伝では、その不当な評価に
対する星さんの思いが活写されており、
「人間・星新一」が伝わってきます。

 星さんと同様に、直木賞の候補になりながら、
審査員たちの見る目のなさに泣かされた
筒井康隆さんとの関係も、読み応えがあります。

 しかし、最相さんは、筒井さんが文壇・文学賞の
あほらしさを描いた傑作『大いなる助走』に登場する
SF作家を星さんがモデルだと読み違えている点が、
残念ですね。

 「前髪を垂らした」「若づくりをしている」SF作家といえば、
ご本人(筒井さん)しかいてまへんやろ?
 あの物言いも・・・・

 『大いなる助走』を、ちゃんと読んでないんかなぁ・・・
 このあたりは、最相さんへの不信感を抱かせます。  

 
 とはいえ、『星新一』が傑作評伝であることは間違いありません。

 星製薬の御曹司「星親一」が、作家「星新一」になっていく過程、
異母兄との関係、日本におけるSF文学の創生過程など、
最相さんが活写するさまざまなエピソードは、星ファンならずとも
一読の価値があると思います。

 
 この評伝を読み終えて、また、星作品のいくつかを再読して、
「文学って何やろなぁ?」と、考えてみました。

 星さんの作品を「文学」として評価しない人たちは、
星作品に対して、「人間が描けていない」「軽い」などと
批判していたようですが、私が上に挙げたショート・ショート
における唯一無二の想像力・発想力こそ、人間の精神力の
可能性を示す、「究極の人間描写」なのではないでしょうか?

 そしてその描写は、あの「軽い」文体でなければ、
不可能だったのではないでしょうか?

 想像力・発想力の貧困な評論家や作家たちには、
「星文学」は、分不相応だったのかもしれません。

 最相さんのおかげで、「文学者としての星新一」
を、私は再認識しました。

 姫野カオルコさんを高く買っている斎藤美奈子さんが、
星新一をどう評価しているのか、興味深いですね。
by kase551 | 2007-04-11 23:51 | | Trackback | Comments(0)
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