1990年代半ばから懇意にさせていただいていた先生の墓参をする。
昨年3月に急逝された先生の葬儀は、ごく近親者のみで行われたが、
8月に、友人・知人などが参加する「お別れの会」が開かれた。
「お別れの会」に参加できなかった私にとって、今回の東京訪問の
主たる目的は、非礼をわびるとともに、先生の奥様にお目にかかるためのものだ。
午前中、新宿御苑近くの寺に行き、午後、お宅にうかがう。
「かばんをもらってほしい」と、身に余るお言葉をいただく。
先生の遺品であるかばんは7つあり、すべていただきたい衝動にかられるが、
分をわきまえて、ひとつちょうだいする。
質実で飾り気ないが、すっきりとしてセンスよく、
中にみっちりとつめこめる、まさに先生のお人柄の
ようなかばんだ。
「あぁ、この取っ手を先生が握ってはったんやなぁ・・・」
と思いながら持つと、なんとも言えない気分になる。
先生から教わったことのいくぶんなりとも、若い世代に伝えていくことが、
私のするべきことだと、あらためて実感する。