<   2006年 05月 ( 14 )   > この月の画像一覧

『カサブランカ』が名画?

 米原万里さんの死去を悼みながら・・・

 彼女の『魔女の1ダース』(新潮文庫)を
 再読し、映画『カサブランカ』に対する
 彼女の問題意識に同感しながら、
「なんで日本の評論家たちは、あの映画を名画っちゅうんかなぁ・・・」と、
首をひねっております。

 「時の過ぎ行くままに」という主題曲もそれほどいいとは
思えませんが(甘ったるく、単調です)、一番の問題点は、
酒場のシーンですね。

 フランスの植民地だったモロッコのカサブランカが舞台です。
 第二次大戦の序盤、フランスはドイツに占領され、
傀儡政権(ビシー政権)が支配する状態でした。

 すなわち、当時のモロッコ(カサブランカ)においては、
ドイツが支配力を行使していたということです。

 そのカサブランカの酒場でドイツ兵たちが、我が物顔で
ドイツの歌を歌います。

 それに対抗して、フランス人たちが、フランス国歌
(ラ・マルセイェーズ)を高らかに歌い上げ、酒場の客たちも
それに同調するというのが、「酒場のシーン」です。

 10年くらい前に、ビデオでこの場面を見たとき、
「はぁぁ~っ」と、ため息をついてしまいました。
 
 おいおい・・・・
 人の土地に乗り込んで植民地にしておいて、よう(よく)そんな
偉そうにできるなぁ・・・・・

 ここはフランスとちゃうんやけどなぁ・・・
 モロッコでっせ・・・・

 「植民地にされる=国を失う」ということへの想像力が
皆無な人の多い日本では、この映画を「名画」ともてはやす人が
多いのですが、米原さんの著作によると、カザフスタン人たちは
違うようです。

 ソ連(ロシア)による圧迫を受け続けてきたカザフスタンの人々にとって、
フランス人たちの能天気な傲慢さは、許しがたいことのようです。

 『魔女の1ダース』から引用します。

 
 不評の原因は、ナチス・ドイツからのヨーロッパの解放をしきりに叫ぶ
主人公たちが、フランスの植民地であるモロッコに平気で支配者面している
おめでたさにあった。
 同じアジアのカザフ人は、この欧米人の無神経さに即座に気付いたのに、
日本人は、戦後この映画が上映されるや名画として有り難く奉った。「脱亜入欧」、
上昇志向の強い日本人の思考回路は、完全に名誉白人しているらしい」
(118-119頁)

 昨年、これを読んだとき、「その通りや! ほんまやで!!」と
付箋を貼り付け、米原さんへの好感が増しました。


 改めて、ご冥福をお祈りいたします。
[PR]
by kase551 | 2006-05-31 23:00 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(2)

米原万里さん死す

あっ!と声をあげてしまいました。
米原万里さんの死去です。

ロシア語の同時通訳者としてのみならず、多文化人としての深みあるエッセイなどで
名高い彼女の死は、あまりにも早すぎると思います。

ちょうど、『ガセネッタとシモネッタ』(文春文庫)を、読みかけていた時だけに、
まだ信じられない気分です。
 
 私の知る限り、映画『カサブランカ』のアホらしさを正面から指摘した書き手は、
彼女ぐらいしかいないと思います。
 『カサブランカ』のアホ加減については、明日述べます。
 簡単に言えば、「植民地支配に対する無自覚・鈍感」ですね。

 それはともかく、米原さんのご冥福を祈ります。


 「クソまみれのショスタコービッチ」のエピソードも、
彼女がいなければ、日本では知られなかったでしょうね・・・

『ショスタコービッチ』
[PR]
by kase551 | 2006-05-31 00:10 | | Trackback | Comments(0)

スーパーニッカ

 20年を越えて愛飲しているウイスキーが、
この「スーパーニッカ」です。
c0040369_7485918.gif

 日本のウイスキーの最高傑作だと思います。

 酒の好みは、あくまでも個人の嗜好ですが、
サントリーのウイスキーを飲んで、「美味い!」
と感じたことはありません。

 学生時代、就職活動をする際に、
「俺は酒好きやから、酒のメーカーに行こうか」と考えた私は、
「ニッカとサントリー、どっちが俺の好みか確認しよう」と思い、
同一価格帯の両者の製品(ハイニッカとサントリーレッド、
ブラックニッカとサントリーホワイト、ニッカG&Gとサントリーオールド、
スーパーニッカとサントリーリザーブ)を買い込み、目隠しをしての飲み比べ
(ブラインドテスト)を数日間、自室で行いました。

 さぞかし部屋は酒臭かったでしょうね (黙認してくれた親に感謝します)。

 その結果、私が「美味い!」と思ったのは、すべてニッカ製品でした。
 
 ニッカウヰスキーに入社後、営業社員としての私は、
夜の「業務店視察」で、スーパーニッカを毎日のように
飲み続けました。 ただし水割りで・・・・・ 
 仕事ですから・・・

 水割りでも美味しいですが、今、こうして完全にプライベートで
ストレートで飲むスーパーの味は、なんともいえませんね。
[PR]
by kase551 | 2006-05-27 23:49 | | Trackback | Comments(3)

野村昭子さん

 人気ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」に出演している
野村昭子さんに興味があります。

 あのドラマや、単発ドラマなどでの演技を見るたび、
「上手いなぁ~」と感嘆します。

 今日偶然、ケーブルテレビのBS朝日『徹子の部屋』で、
お姿を拝見しました。

 「渡鬼」での「タキさん」のイメージが強いせいか、
街中で、「おばさん、観てるよ!」などと、肩を叩かれる
ことがあるそうです。

  番組で野村さんは、
 「私は、慣れてないので、さわられることが新鮮なんですねぇ・・・」
 とおっしゃいました。

  それを受けて黒柳徹子さんは、
 「それは、イヤだってことですよね?」と
 すかさず確認し、野村さんは「えぇ・・・」と答えました。

  このやりとりが、絶妙でしたね。

  「抵抗を感じる」ことを「新鮮」と表現するセンスに
 感嘆しました。


  「ことばを磨くのは、どんなファッションよりもカッコいい
 おしゃれだ」
  という意味合いのエッセイを、昔読んだことがあります。
 
  確か、向田邦子さんの文章だったような・・・・・ 
[PR]
by kase551 | 2006-05-26 22:15 | 映画・ドラマ | Trackback(1) | Comments(0)

『砂の器』

 小倉出身の作家といえば、松本清張氏ですね。

 中学生の頃、本好きの叔父からもらった小説本数冊の
中に、『砂の器』(光文社)がありました。
 
 ひまつぶしにパラパラと読み始めたのですが、
すぐにその世界に引き込まれ、一気に読了しました。

 いわゆる「ズーズー弁」が、東北以外の地方でも
使われているという事実が、新鮮でした。
 また、ハンセン病に対する偏見の恐ろしさを示した
という点においても、この作品は傑作といえます。
 そして、主人公のベテラン刑事が食べるお茶漬けや
味噌汁などの描写がリアルで、おいしそうなんですね。
 「神は細部に宿る」・・・・・

 約30年前に見た映画のリマスター版DVDを買い、
20代の若者に貸しました。
 「3年前ぐらいのテレビドラマ版より、こっちが100倍ええでぇ・・・」
と言いながら。

 しかし、あのテレビドラマ『砂の器』は、ひどかったですね。
 原作や映画が描いた、ハンセン病に対する偏見への問題意識を
完全に削除してしまっていました。

 松本清張氏がご存命なら、あのドラマは実現しなかったでしょうねぇ。
[PR]
by kase551 | 2006-05-26 01:07 | | Trackback | Comments(0)

小倉の夜

 昨夜は、北九州市・小倉で飲みました。
 
 福岡に来て4年になりますが、小倉で飲むのは初めてです。

 山口県・九州在住の在日コリアンの親睦会である
「山九(サンキュウ)クラブ」の宴会に、お邪魔させて
いただきました。

 大阪からゲスト参加された知り合いのP先生が、
「かせたにさんもどないや?」とお誘いくださり、
貴重な機会を得ることができました。

 この日集まったメンバー40人のほとんどは、
40~50代の働き盛りでした。

 「国」や「会社」や「学校」をあてにせず、ほとんど
自分の腕一本で生きてきた人たちの話は、味わい深く、
聞き飽きませんね。

 ついつい調子に乗り、誘われるまま二次会・三次会と
飲み続け、結局小倉で泊まってしまいました。

 クラブの方々とP先生に感謝あるのみです。


 「県レベルでの乗っ取り」「在日特権」などの
悪意に満ちた在日コリアンへの誹謗・中傷が
活字となって広まりつつある昨今だけに、
在日コリアンの実像の一端(あくまでも一端ですが、
間違いなく実像です)を知る日本人としての
私がするべきことは、はっきりしております。
[PR]
by kase551 | 2006-05-24 23:22 | 「在日」 | Trackback | Comments(0)

大阪出張

 金曜日から大阪に出張し、今日帰宅しました。
 国際高麗学会という学会への参加が、主たる目的です。

 この学会は、オープンな雰囲気と、学会終了後の
飲み会が面白いので、参加するのが楽しみです。

 今回も、新たな出会いに恵まれ、大きな充実感を
味わうことができました。
 
 個性豊かな、味わい深い人たちとの交流こそが、
私にとっての「生きる楽しさ」だと思います。
[PR]
by kase551 | 2006-05-21 20:12 | 韓国・朝鮮 | Trackback(1) | Comments(2)

『蜘蛛の糸』と『塩狩峠』

 出勤途中、アスファルトの上を動く青虫(イモムシ)
の姿を目にしました。

 植え込みまで3mあまりの距離だったので、
「このまま這っていけるやろ」と思い、通り過ぎました。

 しかし、もしかしたら自転車や人につぶされてしまうかも
と思い直しました。

 引き返し、つまんで植え込みの葉の上に置きました。

 久しぶりに触るイモムシの感触は、やわらかで、ほのかな
あたたかさがありました。

 小学生時代、アゲハチョウの幼虫を飼育して、孵化させたことを
思い出しました。
 アゲハの幼虫は、触ると黄色い触角を出して、独特の匂いで
抵抗するのですが、今日の幼虫は、無抵抗で「愛い(うい)ヤツ」でした。
 

ふと、手塚治虫さんの『火の鳥 鳳凰編』と、芥川龍之介さんの
『蜘蛛の糸』を思い出しました。

 前者については後日述べますが、『蜘蛛の糸』は、あまりにも
有名なので、説明の必要はないでしょう。
 
 もし私が主人公の「カンダタ」なら、彼と同じことをしないとは言いきれません。
 「これは俺の糸だ、お前らは来るな!」と言わないという自信はありません。

 ここで思い出すのが、三浦綾子さんの『塩狩峠』です。
 ブレーキが利かず、暴走する客車を止めるために、
線路に身を投げて多くの人の命を救った青年の話です。 

 小泉さん・安倍さん・麻生さん・竹中さん・中川さんたちに対しては、
当然、「カンダタ的」になるでしょうが(それ以前に、彼らはわれわれを
「捨て石」にするでしょう)、私にとって大事な人たちが、事故や病気や
理不尽な暴力に脅かされた時には、『塩狩峠』の主人公のように
ふるまえれば、と思います。
 
[PR]
by kase551 | 2006-05-18 21:18 | | Trackback | Comments(0)

本土復帰・・・

 5月15日は、沖縄が「本土復帰」した日です。

 1400年代に尚氏が王朝を築いた琉球王国は、
薩摩・清に圧迫されながら、400年近く独立を保って
いました。

 しかし明治政府は、「琉球処分」という武力侵略によって、
1879年に琉球王国を「沖縄県」として併合しました。

 その併合された沖縄が、太平洋戦争では日本における
唯一の地上戦となり、10万人あまりの民間人が犠牲になり、
1952年の「日本独立」においても、依然として米軍政下に
おかれ、いまだに米軍が駐留し・・・・・

 在日米軍の75%を押し付けて、「癒し」「ちゅらさん」ですか・・・・・
[PR]
by kase551 | 2006-05-17 00:40 | 沖縄 | Trackback | Comments(4)

これを読める幸せ・・・

  30年以上前、東大阪市の布施というところにあった祖父宅を、
私は毎週訪れていました。

 土曜の午後、近鉄生駒から布施まで約20分の「電車旅行」を
楽しみ、布施駅から祖父宅までのアーケード街にあるおもちゃ屋で
プラモデルを買い、駄菓子屋で「一冊10円」でならべられている、
1~3週遅れの『少年マガジン』『少年サンデー』『少年キング』をまとめ買いします。

 そして、祖父宅でプラモデルを作り、マンガ雑誌を熟読するのが
土曜日の楽しみでした。

 当時、印象に残った作品には、『あしたのジョー』『空手バカ一代』
などの梶原一騎原作作品のほか、ちばてつやさんの『蛍三七子』、
矢口高雄さんの『○○』(失念しました。巻頭カラーだったと思います。
釣りシーンのダイナミックさに魅かれました)などの、読みきり短編の傑作などがあります。

 そして、みなもと太郎さんの『ホモホモ7』は、しゃれたユーモアとリズム感が
すばらしく、「大人のかっこよさ」を感じました。

 数年後、その「かっこよさ」を示したみなもと太郎さんの『レ・ミゼラブル』を、
生駒駅北側の本屋で立ち読みした私は、本屋の主人の目を意識しながら、
涙をぬぐいました。
 
 そして今、私は、同じ作家の『風雲児たち』新刊を手にして、
付箋を貼りまくっております。

c0040369_22543046.gif

 シーボルトの娘・イネと、大村益次郎(村田蔵六)の関係も興味深いですが、
クリミア戦争におけるナイチンゲールの業績を知る上でも、この作品は
有益な教材です。

 「戦争終了後、ナイチンゲールは『クリミアの天使』と呼ばれ
一躍有名になったが、彼女自身はそんな名声には耳も貸さず
政府を相手に医療と病院の改革を訴えつづけ」(84頁)

 これは、斎藤美奈子さんが指摘した、「すご腕実務ばばあ」としてのナイチンゲールが、
「白衣の天使」「ランプを持ったレディ」として改竄される過程をうかがわせますね。
『モダンガール論』


 この作品を、この作家の作品を読み続けられる幸せを、実感します。  
[PR]
by kase551 | 2006-05-14 23:07 | マンガ | Trackback | Comments(0)