昨日少しだけ触れた、『アラビアのロレンス』は、
私が特に好きな映画のひとつです。
実在の人物である英国軍人ロレンスの「夢と挫折」を
描いたこの映画は、「個人と国家」「異文化接触」など、
さまざまなことを考えさせてくれます。
英国軍将校でありながら、砂漠の民に共感し、
「アラブ解放」のために情熱を傾けていく「ヒーロー」
としてのロレンスは、颯爽ということば、そのものです。
新聞記者の「なぜ、砂漠が好きなのですか?」という
質問に、「清潔だから」と答えるロレンス。
たぶん、"It's clean"と言っていたと
記憶しています。
しかし彼は、アラブでの利権確保のみを考える
母国(英国)と、外国勢力とのかけひきで生き残りを
図ろうとするアラブ世界の指導者(ファイサル王子)
の思惑により、結局は「捨て石」となり、失意のまま
アラビアを離れます。
ロレンス役のピーター・オトゥールも素晴らしいの
ですが、何と言っても魅力的なのが、ガチガチの
アラブ民族主義者・アリを演じるオマー・シャリフです。
最初は警戒していたロレンスを友人として認めていく過程が、
なんとも味わい深いですね。
アリとロレンスのやりとりも印象的です。
古びた毛布を持っていこうとするロレンスに、アリが声をかけます。
「汚いぞ」
ロレンスが答えます。
「でも、あたたかい」
"It's not clean. But warm"
だったと思います。
"It's clean"との対照の妙を感じます。