畳部屋

 故山本夏彦さんのエッセイを、ときおり読み返しています。

 従軍慰安婦問題などに関する見解には全く賛同できませんが、
それ以外では、思わず引用したくなるタイトルや意見も多いんですね。

 「笠智衆だいっきらい」「何用あって月世界へ」「命ながければ恥多し」など、
独特の山本節には、何ともいえない味わいと説得力があります。 
 
 私が好きでも嫌いでもない俳優・故笠智衆といえば、
テレビドラマ『おれは男だ』と、映画『男はつらいよ』を連想します
(小津安二郎作品は未見ですので)が、あの連作映画は、実に興味深いですね。
 
 笠氏演じる僧侶の下働きをする関西弁の佐藤蛾次郎さん(源公)は、
あの映画において「人間扱い」されていません。 
 
 「源ちゃん、(お兄ちゃんのために) ごめんなさいね」と声をかける、
さくら(寅次郎の妹)以外は、源公をあきらかに軽んじています。
 
 そういえば、松坂慶子さんが関西の芸者を演じた第○○作(数字はわかりません)
でも、「男の関西弁」に対する嫌悪を、寅次郎が口にする場面がありました。

 山田洋次さんには、関西への独特の思いがあるのかもしれません。

 関西で生まれ、2歳までそこで過ごしたという山田さんの心情には特に関心は
ありませんが、中高年サラリーマン慰撫映画『たそがれ清兵衛』に呆れはてた私は、
山田監督の新作映画を見ることは、これからはまずないでしょう。

 『男はつらいよ』シリーズがテレビでまた放映されれば、見るかもしれませんが・・・・
 あのシリーズは再見して、いろいろと考えてみたいですね。 

 思い返せば、山田監督の名作と言われる『幸せの黄色いハンカチ』
『遥かなる山の呼び声』などにおいては、「たくましい男」「強い男」と、
「支える女」「耐える女」「待つ女」というステレオタイプの男女関係が
描かれていました。
 
 「さすらう男と、待ち続ける女」というのが、山田洋次さんはお好きなようです。 

 さらにいえば、『男はつらいよ』シリーズは、「理想の女性」である「さくら」に
寅次郎が気遣われ、見守られ続けられるという、究極のシスターコンプレックス
映画なんですよねぇ・・・・
 寅次郎にとっての「マドンナ」が、「さくら」以外にはいないことは、あのシリーズを
何本か見れば、わかってくるでしょう。

 日本各地の風景を記録しているという点において、『男はつらいよ』の
記録映画としての価値は極めて高いと思いますが、それ以外でも、
実に興味深いシリーズです。

 「最終話は、寅次郎がアリランを歌いながら玄界灘を渡っていくというシナリオ案があった」
という逸話も含め、『男はつらいよ』への関心は尽きません。

 そういえば、矢野顕子さんの名曲「ラーメンたべたい」に、次のような歌詞がありました。

 男もつらいけど 女もつらいのよ

  
 
 さて山本夏彦さんは、『室内』という雑誌を創刊し、名雑誌として育て上げました。
 当然、住居に対する感覚は鋭く深いのですが、その山本さんの「和室なくなる」と
いうエッセイに、私は心から同感します。 

 「マンションも値段が安いものにはまだ和室が一間あるが、いかにもお座なりである。
 (中略)高級になればなるほど和室はない。立ってよし歩いてよし寝ころんでよし、
 畳はすぐれた床材料である」(『オーイどこ行くの 夏彦の写真コラム』(新潮文庫 153頁) 

 「それにしても四十余年建築家が和室を征伐したがる情熱を私は怪しむのである」(同書154頁)

 ほんまでっせ・・・・

 現在私は、築約30年の賃貸マンションに住んでおりますが、入居を決めた
最大の理由は、3部屋すべてが畳部屋だったことです。
 20代とおぼしき不動産会社社員から、、「ここは駅からは近いんですが、部屋が全部畳なんですよねぇ・・・」
と、申しわけなさそうに案内されたとき、心の中で「おぉ!すばらしい!」と叫びました。 

 こういう物件は、ほんま少ないんですよねぇ・・・・
 駅から近く、近所に対面販売の店(八百屋と鶏肉屋)があり、すべて畳部屋・・・・


 畳にあぐらをかいて、ちゃぶ台に置かれたビールと枝豆・焼き鳥を楽しむ
私のようなオッサンは、「絶滅危惧種」になりつつあるのかもしれませんが。
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by kase551 | 2007-06-04 22:42 | 雑感 | Trackback | Comments(0)
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