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韓国映画『牛の鈴音』

 昨日福岡で、韓国映画『牛の鈴音』の上映が始まった。

 すでに東京などでは、昨年末に公開されている
(http://www.cine.co.jp/ushinosuzuoto/theaters.html)
この映画は、韓国で300万人の観客を動員し、
「牛の鈴音シンドローム」ということばを生んだ話題作だ。

 80歳にならんとする老夫婦は、早朝から夕方まで、
40歳という超高齢の牛とともに、田畑で汗を流す。

 「生活は面倒みるから、牛を売って隠居したら」
 というこどもたちの勧めにも、老農夫は耳を貸さず、
 牛とともに農地に立ち続ける。

  妻は、「牛も私と同じ。苦労するように生まれついた」とこぼす。
  しかし彼女は、「9人のこどもたちを、学校も出して育て上げた。
  牛のおかげだ。牛がいなかったら夫は死んでいる」とも言う。

  牛が老夫婦に残したものが大写しになったとき、
 私の涙腺は崩壊した・・・・^^;

  
  今日、この映画の封切り2日目を迎えた福岡の映画館で、
 映画上映後、「トークイベント」が開かれた。
  題名は「ビル街に響く牛の鈴音」。
  発題者は、私。^^;

  支配人と懇意にしているTさんが、
 「あなたは韓国での生活長かったから、ちょっと話できるでしょ?」
 と声をかけてくれたので、知ったかぶりをするのが大好きな俺は、
 当然「よろこんで!」と引き受けた。


  1960,70年代から急速に進んだ韓国社会の都市化・産業構造変化。
  ソウルオリンピック・文民政権誕生という転換期1980年代末~1990年代前半に
 おけるサラリーマンたちの「成長と安定と安心」。

  それが崩壊した1997年の金融危機とIMFによる管理。
  金大中政権による経済立て直し・・・・・

  韓国における親友Sが最近送ってくれた、
「今、韓国で業績の良い企業は、人件費カットと福利厚生費カットを
徹底的にやった会社だよ」というメールの内容も紹介する。

  「渡り鳥お父さん」「ペンギンお父さん」などの
 「流行語」も紹介する。
  
  ある程度安定した所得のある家庭でも、
 子供の将来を案じて留学させ、子の世話のために妻も同行したため、
 韓国で一人黙々と働きながら送金し、年に一度、海を渡って
 妻子に会いに行く「渡り鳥」や、海を渡る余裕がない(飛んでいけない)
 「ペンギン」などの涙ぐましい事例が珍しくない。
 
  このような韓国社会を生きる40代以上の中高年世代の
 約半数は、農林水産業(農業が大部分)に従事する親の苦労を
 目の当たりにしてきた。
  1970年の韓国における職業別人口分布は、
 第一次産業50.4%だった(これが2004年には、8.1%にまで激減している)。
     
  映画館に足をはこぶことの少ない中高年層がこの映画に
 魅了されたのは、彼らが『牛の鈴音』を、自らの親世代に送る
 「鎮魂譜」として受け止めたからではないだろうか。


  こういうトークイベントの魅力は、適当に「毒」が吐けることやね。^^;

 俺「この映画をフランスでブリジットバルドーが見たら、絶対に文句言いますよね。
   犬を食べる韓国人が、牛も虐待してるとか。 な~にをゆーてんねんですよねぇ?
  ガチョウの口にチューブ突っ込んで、無理やりエサを送り込んで『脂肪肝』にした
  のを楽しんで食べる自分の国のフォアグラを批判してからものゆわんかぁ、ですよね?」


 質問者「この映画のおじいさんは、完全無農薬で、米などを作っていますよね。
    この映画以降、それをブランド化することなどはなかったんでしょうか?」
 俺「私の知る限り、それはなかったと思います。もうご高齢ですし。
   でも私が息子だったら、絶対にやります。『なぁ、えぇやろオヤジ、マージンやるから』
   っちゅうて・・・」
  
  むしろ息子さんたちは、ほんの一場面に過ぎないやりとりを見た観客たちから、
 「親不孝者」扱いされて困ったようです。
  そして、自分たちの親の家周辺を「観光地化」しようとする行政に、
 「親を困らせるな」と反対しているらしいですね。 
  
   某新聞の取材に応えて長男は、「母がなんかキツイひとみたいにうけとめられるようで
  いやですね。母は市場で『1万500ウオンだけど、1万でいいよ』と言われても、『あんたも
  商売だから、残るものは残しなさい』と言って、きっちり1万500払うんですよ・・・」
  と言っていましたが、これは杞憂やね。

   あのおかあさんの情深さは、表情からも伝わってくるしね。 
  
by kase551 | 2010-03-07 23:51 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(0)


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