先日、気迫あふれる相撲で白鳳を下して優勝した
朝青龍に対して、横綱審議委員の中から、
「ガッツポーズの品格」を問題視する声があがったという。
わたしは朝青龍が嫌いだ。
巡業をさぼってモンゴルでサッカーをしたことや、
取材する記者に対する「お前」などのことばづかいも
腹立たしいし、モンゴル力士として先輩である
旭鷲山(引退)に対するかつての態度や、旭鷲山の
車のドアミラーを壊したことなど、彼の言動は、
社会人としては、お粗末過ぎる。
しかし、土俵上での気迫と、ここ一番での勝負強さには、
「おぉ!」と感嘆、感動することが多い。
これは、朝青龍の大きな魅力だろう。
相撲は、伝統芸能でもあるが、それ以前に格闘技だ。
ごちゃごちゃ文句つけるのもえぇけど、
「あの気迫だけは、他の力士も見習うべきだ!」くらい
ゆぅたらどないやねん。
現在の相撲協会理事長は、元横綱・三重ノ海だ。
勝ち越すのがやっとという「先の見えた大関」だった
三重ノ海が、円熟の域に達そうとしていた横綱・輪島に
挑んだ一戦は、今でも私の脳裏から消えない。
立ち合いでぶつかったあと両者は、土俵の中央で向かい合う。
そこで三重ノ海が唐突に左右の張り手を輪島に見舞う。
それは、十分にバックスイングをつけた、強烈な二発のビンタだった。
テレビの前の私は、思わず「おぁ~っ!」とうなった。
ふらつく輪島を一気に寄り倒す三重ノ海。
この気迫あふれる相撲は、三重ノ海にとって、大きな転機だったと思う。
彼はその後、好成績を重ね、横綱に昇進する。
相撲は格闘技だ。
格闘技の経験もないお上品な方々が「品格、品格」と、
ひとつおぼえを繰り返す姿は、朝青龍の「ダメ押し」や「ガッツポーズ」
よりも、はるかに見苦しい。