みなもと太郎『風雲児たち』(潮出版社)は、
江戸時代に生きたさまざまな人物を、史実に
もとづいて、実に魅力的に描いている。
博物学者であり、科学者であり、鉱山開発者であり、
作家であり、デザイナーであり、画家でもあった平賀源内は、
友人だった杉田玄白が墓碑に記したように、「非常の人」だった。
みなもと太郎の描写は、早すぎた天才・平賀源内への愛惜に満ちており、
深い感銘を受ける。
源内が「風来山人」の筆名で著した「根南志具佐」
を、少し読んでみた。
『日本古典文学大系』(岩波書店〉の『風来山人集』に収められている。
この作品の自序には、梵語やオランダ語、そしてハングルも使われている。
源内は、「むちゃくちゃ」という日本語を、「むちゃりくちゃり」と発音を
少し変えて、ハングルで表記している。
正確な表記ではないが、源内が朝鮮語の発音とハングルの構造に
ついて理解していたことは明らかで、非常に興味深い。